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Kigali skyline”, by Lori Howe, licensed under CC BY 2.0

内戦後のルワンダにおける権威主義的体制の強化と国際政治

内戦後のルワンダの国内政治体制は、大統領への極端な権力集中やリベラルデモクラシー制度の形骸化に特徴付けられる。この一方で、急速な経済復興と「ガバナンス」の改善を成し遂げ、ルワンダは紛争後の復興のモデルケースとなった。ルワンダは国際政治を巧妙に利用することでこれらを実現したことを示す。

July 28th, 2020

このポストは、大学院の出願にあたり作成したエッセイを基に書きました。

 本稿は、内戦後のルワンダにおける権威主義的政治体制の強化を、国際政治と関連付けて論じる。構成は次の通りだ。まず、内戦後のルワンダの政治体制を簡単に紹介する。次に、これを国際政治の文脈から整理し、社会構成主義的な視点から理解を試みる。最後に、本稿のまとめと課題を述べる。

 ルワンダはアフリカ中央部に位置する小国で、90年代に深刻な民族紛争を経験した。内戦はツチ系反政府勢力RPFが勝利する形で終結し、その後は急速な経済復興と良好なガバナンスを実現した。一方で、政府の「ツチ化」や、言論や結社の自由に対する弾圧、憲法改正による大統領の任期延長といった政府の独裁、権威主義的傾向が指摘されている。武内(2010: 20)は、政権が物理的暴力を用いて国内の敵対勢力を排除すると共に、国内の政治制度や外交関係を利用して国内統治を強化したと主張する。以下では、内戦後の国際政治に注目して議論を行う。

 内戦後、国内統治体制を整えることが新政権の急務となった。内戦終結直後から、新政府は民族出自による差別を一切否定すると共に、ルワンダが乗り越えてきた状況を鑑みて5年後の複数政党制選挙の実施を約束した(The New York Times, September 7, 1994)。また、国連安全保障理事会に国際法廷の設置を要請(United Nations, S/1994/1115, 1994)し、同年中にルワンダ国際刑事法廷(以後、ICTR。)が設置されることとなった(United Nations, S/RES/955, 1994)。しかし、こうした民主化と国民和解の試みは不徹底に終わる。当初5年後に約束された複数政党制は遅れること2003年に導入されたが、ジェノサイドイデオロギーや民族分断主義を助長しているとの理由から、反体制派は厳しく弾圧された。また、ICTRが戦争犯罪として訴追可能だったのは、事実上フツ系勢力に限られており、市民社会からは「勝者の裁き」であるとの批判がされた。(Human Rights Watch, 2009)他方、国際社会は、国連や大国の不干渉がジェノサイドという破滅的な帰結を招いたという反省から、内戦後のルワンダの平和構築と国家建設に積極的に介入することとなった。前述の通り、内戦直後ルワンダ政府は民主化や国民和解に向けて積極的態度を見せたため、国際社会もこれを好意的に捉えたと考えられる。その後、ルワンダ政府の対応が表面的なものであることが露呈したが、国際社会は概ねルワンダ政府の動きを黙認することとなる。Uvin(2001: 180, 183)は、ドナー諸国が当初民主化の急激な導入による政情の不安定化を警戒し、ツチによる報復行動を「理解できるもの」として扱ったと主張する。また、Reyntjens(2006)は、ルワンダ政府がジェノサイドの被害者であることを免罪符として利用したと主張し、これを「ジェノサイドクレジット」の搾取として批判している。以上で示した通り、建前上ルワンダは国際社会に対してはリベラルデモクラシーや人権重視の姿勢を見せる反面、ジェノサイド経験という国家アイデンティティや民族統一といったイデオロギーを用いて国内規範を強化した。さらに、良好な経済開発とガバナンスを実現して紛争後のロールモデルとなることで、国内外からの体制批判を抑圧する構造を一層強化している。これを社会構成主義的観点から考えると、ルワンダは大国の権力や利益に追従する主体や人権や民主主義と言った規範をただ受容する客体ではなく、国際政治を巧妙に利用し国内統治体制を強化した行為主体と言える。

 最後に本稿のまとめと課題を述べる。ルワンダの権威主義体制の強化と国際政治の関係を捉える上で、社会構成主義的な分析は有益な洞察を与える。しかし、これが紛争後の政治体制や国際政治を分析するにあたりどこまで一般化可能なものかについては、今後のさらなる検証が必要だ。また、ルワンダの国際法的正義や人道的対応の不徹底のみを批判することは、人権帝国主義的な議論となる恐れがある。そのため、ルワンダや国際社会の国民和解や平和構築の取り組みは過小評価されるべきではないことを最後に強調して終わりたい。

参考文献

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© Hiroki Kameyama