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ポストコロナの視点

「ポストコロナ」が提起した問題群を考察する。ポストコロナ的視点から導き出されるのは、見かけの生活様式の変化に限られない。それは、兼ねてから存在した問題と共鳴し、大きな政治、経済、社会的インパクトを引き起こしている。

October 24th, 2020

新型コロナウイルスは感染しても無症状であることが多いことに特徴がある。そのため、感染状況をリアルタイムに特定しコントロール下に置くことが難しい。専門家からは第2波、第3波が予想されているが、治療薬やワクチンをはじめとした新たな治療法の開発にも数年単位の時間を要すると言われている。さらに、今後新たな感染症や天災、人災が起こる可能性もゼロではない。このような状況の中、私たちはどう生きるべきなのか?

現存の技術によって自然をコントロールし無菌化、衛生化された究極の世界を実現するのは到底難しそうだ。例えこれが可能であるとしても(ある種デジタル全体主義の極致である究極のパノプティコンになりそうだが。)、新しい問題にぶつかることは想像に難くない。そのため、人間は行きすぎたエコノミーへの偏重とエコロジーの搾取を反省して、自然と共存する態度(人間も自然の一部であり、自然を超えることができないということを認めうまく付き合っていく態度)を身につけるべきではないだろうか。こうした文脈から、「ポストコロナ」や「Withコロナ」、「アフターコロナ」、「ニューノーマル」といった一連の新しい生活様式が提起されているよう。

例えば、世界中でソーシャルディスタンスやマスクの着用、外出後のうがい手洗いが当たり前の規範となった。また、日本ではリモートワークやテレワークの導入が進み、デジタル化は今や国家の重要戦略の一つに位置付けられている。しかし、コロナウイルスは目に見える形で新しい生活様式を提起しただけではない。前述した経済と環境の関係をはじめ、近代以降の行きすぎた個人主義やネオリベラリズム、民主主義の原理までが問い直されている。人類は人間活動の拡大と自然の開発の過程で、未知のウイルスと遭遇してきた。コロナウイルスの正確な発生源は未だ明らかになっていないが、専門家からは野生動物との接触が原因だった可能性が指摘されている。加えて、グローバル化された人やモノの行き来がウイルスの世界的流行を可能にした。そのため、今回の新型コロナウイルスのパンデミックは、人間社会のあり方に対する警告であり、新しい生活様式を実践すれば過ぎ去る一過性の嵐のようなものではない。以下では、ポストコロナに対する理解を深めるため、コロナ禍で提起された政治、経済、社会的問題を概観する。

政治において、大規模なロックダウンをはじめとした非常時、例外時の個人の基本権(生存権、自由権など)のあり方が重要なトピックとなった。中国やシンガポールに代表されるテクノロジーでの感染者情報の管理をはじめ、全体の福祉や経済的利潤を追求するために国家が個人や集団の管理を行う生権力的な統治のあり方も再度議論を呼んだ。こうした権威主義的、全体主義的な政府による強権的な感染対応の一応の「成功」や、ポピュリスト的リーダーのコロナ対応の不作為、ポストトゥルース的な社会のあり方は、民主主義や自由主義の根拠なき万能感を喪失させるには十分なものだった。また、グローバル資本主義体制の結果推進された中国への強い経済的依存は経済安全保障問題を提起した。

経済においては、環境を過剰に破壊することで成り立ってきたグローバル資本主義の闇の側面を明らかにした。上でも指摘した経済安全保障問題は、西欧諸国の中国への不信感につながり、当面米中間の貿易摩擦に解決の糸口は見えない。話は国際貿易に限定されず、ロックダウンの結果各国の国内消費は冷え込み、多くの企業が倒産や首切りを余儀なくされた。

社会において、構造的差別、不平等の構図が炙り出された。世界中でまず初めに雇用を奪われたのは非正規労働者、インフォーマルセクターの労働者であった。感染リスクの高い中でも低賃金で働くことを強いられたのはエッセンシャルワーカーと呼ばれる人々であった。こうした労働に従事していたのは、農村からの出稼ぎ労働者や若者、エスニックマイノリティ、ジェンダーマイノリティだった。日本でも、医療従事者やコロナウイルス陽性者、中国系の人々などに対する差別が巻き起こった。世界ではアジア系に対する差別が横行し、黒人差別反対のBlackLivesMatterが大きなうねりとなった。

以上のようなコロナウイルスの政治、経済、社会的インパクトは、兼ねてから存在した問題や運動と共鳴して、世界中に大きな影響を及ぼしている。文脈が違えどコロナ禍は私たちの政治、経済、社会のあり方そのものに対して疑問を投げかけている。これは、見かけ上の生活様式に限定される話ではない。

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© Hiroki Kameyama